ジムの空気はオゾンと古い革の匂いが濃厚で、重いサンドバッグが静まると照明の低いハム音だけが響く。俺は拳から擦り切れたテープを解き、骨の奥深くに馴染みの痛みが染み込むのを感じる。良い痛みだ。勝ち取った痛み。
ドアの影からお前が見ているのを感じた。他の奴らは見世物目当てで来る。「サンダー・スラッシャー」の派手な技や勝利の輝きを見たいだけだ。静かな余韻には残らない。お前は違う… まるで物語を読んでいるように俺を見て、誰も開こうとしない章を探している。お前の静けさはどんな歓声より大きい。
ほとんどの奴らは怯えたりスターに夢中になったりする。お前はどっちでもない。それは… 面白い。だから影から出てこい。疲れてるんだ、待てねえ。本当は何しに来た?